FORTUNE ARTERIAL SS しゃーぷじゅういち
「ねーねー、こーへー」

 ある日の放課後、教室でそんな言葉を聞いた。

「こーへーは、好きな人・・・いる?」

 色恋沙汰とは無縁そうな奴から、そんな言葉が聞こえた。

「・・・・・・え?」





FORTUNE ARTERIAL SS しゃーぷじゅういち





 運動部の練習だろう、グラウンドからは掛け声が聞こえてくる。

 だが孝平には聞こえない。彼の脳内はエマージェンシーモード、ざわ・・・ざわ・・・と効果音が流れてそう。

「どうなの、こーへー。いるの?」

 いつもなら平然と返すはずの孝平だが、自分の色恋話、ましてかなで口からそんな言葉を聞いたとあってフリーズしてしまっている。

「え、いや、あ・・・いない・・・けど」

 一瞬心の中にあの人が浮かんだ・・・が、孝平は、それが恋だとは、まだ知らない。

「ふぅーん・・・いないんだ・・・」

「なんでいきなり、そんな事聞いてくるんだ?」

「んにゃ?単に気になっただけだよ?うーん・・・居ないかぁ。案外こーへーは鈍感だから、自分の気持ちに気付いてないだけかも」

 かなでは続ける。

「こーへーの周りにはいろんな女の子がいるのに・・・。えりりんや白ちゃん・・・私やひなちゃんにきりきりにへーじ・・・少しくらい気になる相手、いない?」

 いつもは破天荒な彼女が、本気の目で孝平を見ている。

「・・・・・・へーじ?」

「ん?へーじが好きなの?」

 うれしそうに聞き返してきた。

「んなわけあるかいっ!」

「ぇー・・・ぷんぷん、へーじ×こーへーって人気あるのに・・・じゃあ誰?いおりん?」

「ソッチ方面から離れろっ!」

「ぇぇぇー・・・じゃあ誰っ!誰ならいいのっ!相手の男はっ!?」

「なんとしてもBLに走らせたいんですか・・・俺は健全で一般な男子学生ですから」

「なら大丈夫。ソッチの喜びはすぐにわかるから」

 だめだこいつ・・・早くなんとかしないと―

「あ、白ちゃん発見。ちょうどいい所に」

 廊下を見れば白がてくてく歩いていた。こちらに気付いたようで近寄ってくる。

「かなで先輩、支倉先輩、こんにちは」

 礼儀正しくおじぎする白。対して破天荒娘は

「しろちゃん、へーじ×こーへーって人気あるよね?」

 などと言っているがどうしたものか。

「え?支倉先輩が受けですか?」

 なんとも予想外の返事が返ってきた。

「も・・・もしかして白ちゃんも・・・・・・」



 そう言いかけた途中、白が孝平を見て・・・・・・


「BLが嫌いな女の子なんて居ませんよっ!」

 なんて、叫んだ。





「は、はわっ・・・」

 自分の発言した内容に今更気付いたのか、顔を赤くして俯く白。

 そして、隣でうんうん、と首を縦に動かすかなで。いやまて何がうんうんだ。

「わ・・・わわ・・・・・・忘れてくださ―――いっ!!」

「あっ、白ちゃんっ!まって〜」

 脱兎のごとく教室から去っていく白。それを追いかけるかなで。


 教室に残されたのは唖然とする孝平と、・・・・・・




「白・・・・・・」




 いつからそこにいたのか、立ち尽くしている征一郎だった。

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